最初に気付いておくべきだったメールアドレスの国名
「我々は同等のタイプのより良い品質のを提供して、あなたはいかなる差額を支払う必要はありません。
(中略)
お返金の手続きは弊社の公式LINEまでご連絡をお願い致します。ご希望の場合は返金いたします。このメールに返信をお願いします。あるいはLINEのサポートに連絡します できるだけ早く返金いたします。大変恐れ入りますが,当店をご利用いただき誠にありがとうございます」
このメールでLINEにアクセスして連絡をすると、詐欺地獄に突入するのでしょう。さすがにこの文面で怪しかったことに気付くわけですが、送られてきたメールアドレスを検索してみると「詐欺に遭った!」という悲鳴が多数書き込まれていました。しかもメールアドレスには、ラトビアを示す「lat」が入っていました。Aさんも一発目のメールで気付くべきではあったものの、「とにかく疲れていて判断力が低下していた……」とのことです。
さすがにLINE登録はしなかったものの、そもそもこのメールが送られてきた時間帯も危険でした。故意か偶然かわかりませんが、金曜日の17時です。仮にここからさらに振り込みを続ける結果になった場合、その時刻から月曜日9時、銀行が開くまでの64時間、銀行に問い合わせをすることすらできない。「そこまで分かってやっているのかもしれない……」とAさんは言います。
さて、お金は戻ってこないことは分かっていたものの、これから起こり得ることを知っておきたいと考えたAさんは警察に相談し、組織犯罪系の対策を行う部署の刑事と会うことになりました。被害届を出すかどうかもその時に聞かれます。以下、後編に続きます。
(後編につづく)
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など多数。最新刊は『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)。