家を継がない次男が知るべき「特別受益の持ち戻し」
実家を継がない次男の側にも、うまく立ち回る術はある。相続関係の著作が多い税理士法人レディングの木下勇人税理士が解説する。
「次男の側の立場で代償金などを請求するなら、まずは実家がいくらで売れるのか、おおよその相場を把握することから始めましょう」
木下氏は相場を把握したうえで、「自分が権利を持つ最大限の額まで求めない」のが賢い交渉術になると指摘する。
「実家の価値が3000万円の場合、その2分の1の1500万円を要求する、といったやり方だと話がまとまりにくい。兄が実家を守ってくれることへの感謝の気持ちで、権利があるマックスまで求めずに、一歩引いた額を請求したほうが落としどころが見つかりやすい。弁護士を入れた話し合いにしないほうが、時間もお金も無駄になりません」(木下氏)
権利を主張するあまり、関係がこじれるのもまた馬鹿馬鹿しいという考え方はもっともだろう。
ただし、交渉に際して把握しておくべき情報もある。それは、自分以外の兄弟姉妹が親からどの程度の「生前贈与」を受けていたか、という点だ。前出・吉澤氏が言う。
「被相続人が亡くなる前、10年以内にあった生前贈与は、贈与された相続人の『特別受益』として相続財産に持ち戻されます。つまり、前述の事例において長男が1000万円の生前贈与を受けていた証拠があれば、3000万円の実家と合わせて遺産総額は4000万円になる。次男に権利が認められる遺留分(遺産の4分の1)は、750万円から1000万円に増えるのです。
遺留分は侵害されていることを知ってから1年、知らない場合でも10年が経過すれば請求できなくなるので、あらかじめ制度についての知識を持ったうえで、情報を精査していくことが重要なのです」