亡くなった父の助言
森山氏は高校を卒業後、ショーパブやカラオケスナックなどを経営。31歳の時に一念発起して北九州の小倉区に魁龍をオープンさせることになった(2001年に現在の博多区に移転)。しかし、オープン直前になっても思った通りのスープができない。悩んでいた時に、久留米から父親が訪ねてきたという。
「父は若い頃、久留米でラーメン屋を営んでいたんですが、母方の両親に“水商売の男に娘はやれん”と言われ、結婚するためにやむなくサラリーマンになった。その父が、いくつかアドバイスをくれたんです」
ただ、当時は素直に父親の助言を聞き入れられなかったという。
「僕も若かったですから、反発してね。喧嘩になった。でも、父親が帰ってから、その言葉が心に染みてきたんです。麺のことや調味料のこと……」
忘れられないのが、父に告げられた次の言葉だ。〈おい日出一、アクも味のうちなんぞ。全部きれいに取ってしまわんほうがいい場合もある〉――その指摘通り、アクを少し残して煮込んだところ、思っていた味のスープに仕上がった。
「32年前、1992年4月6日に魁龍をオープンしたのですが、父はその年の7月に59歳で亡くなった。酒が好きな人でね、それが原因で内臓を悪くしていたんです」(森山氏)
魁龍のスープ・麺にはこだわりと歴史が詰まっている。だからこそ、アンチに何を言われても揺らぐことがないのかもしれない。(了)