「官邸主導」は、一部の官僚に露骨な忖度が見られるという弊害ももたらした。各省庁の幹部が首相や閣僚などの顔色を極度に窺い、政治家の思いつきのような政策に振り回されることも少なくない。
それでも官僚には国の政策に直接関わるダイナミズムを意義に感じる人が少なくないが、実際に行っている仕事といえば「霞が関文学」と揶揄される些末で独特な作法の書類作成や、政策に明るくない閣僚や国会議員への説明や根回しが中心だ。何度も書類の作り直しを求められ、不毛な作業にかなりの時間を奪われている。
政策に無理解な閣僚や横槍を入れる政治家に幹部官僚が迎合する姿に失望し、あるいは社会で役立つスキルが身に付かないことへの焦りなどから、最近は若手官僚が退職するケースが目立つ。
「19歳から受験可能」で「初任給1万円上乗せ」案も
人事院によれば、総合職のうち採用後10年未満で退職した人は、2013年度は76人だったが、2020年度は109人だ。100人超えは3年連続である。2021年3月末までの在職年齢別の退職率(各年度の採用者数における退職者数の割合)で見ると、5年未満退職率(把握可能な2016年度採用者)は10.0%、3年未満退職率(同2018年度採用者)は4.4%だ。
いまやインターネットで簡単に情報を入手できる時代である。「ブラック職場」の実態は学生たちにも筒抜けであり、20代の離職者の多さおよび退職理由を知って、そもそも国家公務員を目指さない人が増えているのである。
国家公務員試験の申込者が減り続けている状況に対して、政府も危機感を募らせている。
その対策として試験制度の見直しを図っている。2023年度の秋試験から受験可能年齢を1歳引き下げて「19歳以上」とし、大学2年生から受験可能としたほか、合格の有効期間も総合職「教養区分」は従来の3年から6年6か月に延長した。優秀な学生に早めに関心を持ってもらおうということだ。各省庁は中途採用にも力を入れている。
政府は昇進してもさほど昇給しないことが早期退職者の増加要因の1つになっているとも分析しており、処遇改善も進めようとしている。
人事院勧告は2023年度の国家公務員の初任給について大卒、高卒のいずれも1万円超の上乗せを求めた。33年ぶりの大幅増だ。月給に関しても全職員平均で3869円増やし、若手職員への配分を手厚くする。さらに、柔軟な働き方を認めるべく、在宅勤務が中心の職員への手当支給や、「週休3日制」の導入も打ち出した。