出生数「0人」の自治体も
地方公務員離れの要因は民間企業を選ぶ人が増えただけではない。出生数の激減による受験対象年齢人口の不足のほうが深刻だ。
政令指定都市など大規模な自治体の場合には、受験者には他の自治体出身者が少なからずいる。例えば、東京や大阪の大学に進学した人が故郷に戻らず、そのまま東京都庁や大阪市役所など就職するケースは珍しくない。
しかしながら小規模自治体となると、市役所や町村役場を目指す人の大半はその自治体か近隣自治体の出身者となる。ところが、小規模自治体の出生数は急減しており、自治体の募集年齢に該当する人口が極端に少なくなっているのである。
将来を見通すと危機的な状況が浮かび上がる。総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によれば、2022年に出生数が10人未満だった自治体は全国で135に上っている。このうち4自治体は0人だ。
2022年生まれの子どもたちは、概ね20年後には就職する年齢に達するが、すべての人が地方公務員を志望するわけではない。こうした点を勘案すれば、これら出生数10人未満の自治体は、20年を待たずして新規職員の採用難に陥ることが予想される。
各自治体の出生数の激減は、将来的な新規職員の採用難にとどまらない。それ以前の問題として、こうした自治体は存続そのものが危ぶまれる。
これまで市役所や町村役場といえば「潰れることのない安定した勤務先」であったが、人口減少社会においては、市役所や町村役場も民間企業と同じく、いつ自治体合併などで消滅してしまっても不思議ではない。これから就職する人たちが定年退職を迎えるまでに、「地方」は大きく変貌しよう。
自治体の消滅とまではいかなくとも、住民数が減り、高齢化が進めば地方税収は目減りする。そうなれば自治体財政は悪化し、職員給与も上がりづらくなる。組織のスリム化や民間へのアウトソーシングを進めるところが増えよう。
それは、職員に求められる役割がどんどん変わるということだ。不慣れな仕事への異動を求められることも多くなるだろう。もはや地方公務員は安泰とは言えない。