人生100年時代、できる限り健康に、長生きしたい──誰もが抱く当然の願いだが、あなたが長生きするためには、あなたの「資産」にも長生きしてもらわなければならない。
手っ取り早いのは支出を減らすことだが、生活費をコントロールしても老後資金が不足しそうであれば、『勤労収入』『年金収入』『資産収入』の3つを増やすことで資産寿命を延ばすのが定石だ。老後の資産問題に詳しいフィンウェル研究所代表の野尻哲史さんが言う。
「3つの特徴を理解して、どう組み合わせるかが大切です。退職後はどうしても勤労収入が少なくなりやすいため、より柔軟性のある資産収入が頼りになります」
資産収入を増やす代表的な手段が、今年1月からスタートした「新NISA(少額投資非課税制度)」だ。「投資」である以上リスクはゼロではないが、銀行の定期預金の金利がわずか0.002%しかないいま、預貯金として置いておくよりもはるかに資産寿命を延ばせる可能性が高い。国士舘大学政経学部兼任講師で早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員、経済キャスターの鈴木ともみさんが言う。
「いまは銀行に預けておくだけでお金が増えたバブル期とは違います。物価が上昇する一方で金利が低水準であること、またデフレからインフレへの転換によって現金そのものの価値が目減りしてしまうという、極めて困難ないまの時代に合った資産形成を考えるべきときです。
ただし、くれぐれも勘違いしないでほしいのは“ギャンブル脳”にならないこと。投資は確かにリスクとリターンがありますが、ギャンブルではありません。一度に大金を投じたり、一攫千金を狙って無茶な運用をしたりせず『長期・積立・分散』の原則を守りさえすれば、投資は資産寿命を延ばす有効な一助となります」(鈴木さん)
事実、金融庁が作成した運用実績を見ると、20年間の運用益は年率換算4~6%がもっとも高く、定期預金に比べれば利率2000倍以上とはるかに増えやすい。もし、新NISAの生涯投資上限である1800万円を年利6%で20年間運用できたとすると、元本2400万円に対する運用益は約2200万円にもなる。
しかも、一般的な株式投資などでは運用益や配当金に約20%の税金がかかるのに対し、新NISAは非課税。2023年までの「つみたてNISA」「一般NISA」では非課税保有期間は最長20年間だったが、今年からは「無期限」になり、投資金額の上限も大きく拡充した。NISA口座はネット証券や対面の証券会社のほか、銀行や郵便局(ゆうちょ銀行)で開設できる。だが、より効率よく資産を増やしたければ、金融機関選びから慎重になるべきだ。家計再生コンサルタントの横山光昭さんが言う。
「もっとも取扱本数が多いのが、楽天証券やSBI証券といったネット証券。オンラインで手軽に口座開設できるうえ、手数料が安いのが魅力です。オンラインに抵抗感があるなら、ネット証券の次に取扱本数が多い対面型の大手証券会社をおすすめします」(横山さん)