人とAIが「分業」
このように「年齢バイアスのない職場づくり」を進めて、驚いたことがあります。元来、中高年の方には好感を持っていただけると思っていたのですが、10代や20代からも非常に好評をいただいているのです。
学生という時期は、同年代の人が集まって、学問やスポーツなどの同じ目標に向かって取り組むという稀有な期間であり、年長者と話す機会がなかなかありません。そうしたなかで、さまざまな世代と一緒に仕事をすることは非常に大きな経験になります。
とくに昨今のコロナ禍では、働く場が限られ、アルバイトなどを経験できなかった若者が、社会に出て学生時代とのギャップに苦しんでいるという話もあります。10代や20代の学生と、60代から70代の方々が対等の立場で働くことが、新しい価値観になっている。企業や社会にとっても、若い人だけでは生まれなかったアイデアやサービスにつながるなど、プラスの効果が期待できます。
そんな新しい働き方を広めていくうえで、当社はテクノロジーの活用も重要視しています。
AI(人工知能)と聞くと「仕事を奪われる」というイメージもあるかもしれませんが、「人にしかできない仕事」はたくさんあります。人手不足が深刻化するこれからの時代は、「人でなくてもできる仕事」はテクノロジーに任せ、従業員には自分のスキルを活かせる仕事を担っていただく。AIか人かの二元論ではなく、その“両建て”で考えるべきだと思います。
〈同社は2015年からAI分野のプロジェクトチームを先駆的に立ち上げ、2019年にはDX(デジタルトランスフォーメーション)事業を開始し、デジタル技術の活用による業務改革を企業に提案してきた。また、2023年には日本のAI研究の第一人者である東京大学の松尾豊教授と共同で、求職者とマッチする求人情報をAIが提案する「AIエージェント」の開発も始めている〉
AIなどのテクノロジーを活用することで、働く人が生き生きと働けるようになれば、企業の生産性の向上にもつながります。さらには業務が効率化できたぶん、働く人の賃上げに充てる効果も期待できます。
当社では2013年から「時給を上げよう!」のキャッチフレーズで「レイズ・ザ・サラリーキャンペーン」を進めてきましたが、昨今のように物価が上がっている以上、それに合わせて賃金も上げていく必要がある。今後も、採用企業に対して「いままでと同じ時給で従来通りの採用はできませんよ」と現状をしっかりお伝えしながら、AIの活用によって人も企業も幸せになる仕組みを後押ししていきたいですね。
(後編につづく)
※週刊ポスト2024年2月23日号