コロナ禍で一層の厳しさを増した雇用情勢。厚生労働省が6月29日に発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.09倍で、コロナ前だった2019年12月の1.57倍と比べると大きく落ち込んでいる。今年に入って緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象となっていない地域では回復傾向が見られ、ワクチン接種後の経済活動再開を見据え求人を出す企業も一定数あるものの、転職・再就職先がなかなか決まらない中高年層からは「企業は年配者を毛嫌いする」との恨み節も聞かれる。一方で採用現場の声を聞くと、不採用が続く原因には「履歴書の書き方」「面接での態度」などが少なくないという。
「うちでは欠員が出るたびに求人をかけており、毎回、幅広い年代から応募があります。先日は、同業大手での勤務経験がある50代男性からの応募があり、私どもも期待していたのですが、面接での態度があまりに非常識で驚かされました」(中堅建設会社採用担当)
いったい何があったのか。この採用担当者が続ける。
「雑談の中で、私が一回り年下だと知ると、男性は急に“タメ口”交じりで話すようになりました。大手を離職した理由を聞くと、自分語りを始めた挙句『ベテランを厚遇しない』『雰囲気が悪い』と悪口の独演会が始まった。キャリアは申し分ないのですが、社会常識、協調性ナシと判断し、不採用とさせていただきました」
このように面接担当者が若い場合、「初めは敬語でも、徐々に気が緩んでタメ口になってしまう年配の方は少なくありません」と、シニア雇用に特化した人材派遣と情報提供を行なう株式会社シニアジョブ代表取締役の中島康恵氏が指摘する。
「こうした傾向は、ある程度の役職に就いていた方に多く見られます。面接担当者が若い場合、年齢でマウントを取ろうとしたり、無意識のうちに足を組んでしまう人もいますが、面接での立場を履き違えてしまっている。また“自分語り”をしたり、前の職場の愚痴をこぼすと、人間関係の構築に難ありと考えられ、採用には当然マイナスになります」(中島氏)
一方で、あまりに控えめな態度も企業からは敬遠されるという。
「面接で『お役に立てるか分かりませんが』『自分は古い人間なので』などという人がいますが、新しい価値観に馴染めず、役に立たない人を採用する会社はありません」(食品会社人事担当)