日本企業そのものも標的になっている。トランプ氏は日本製鉄が進めているUSスチールの2兆円買収計画を「絶対に阻止する」と表明した。
上智大学総合グローバル学部教授で政治学者の前嶋和弘氏が指摘する。
「タイミングが悪かった。経営が立ち行かなくなったUSスチールの経営者や社員の多くは、日本製鉄による買収を歓迎している。買収が成功すれば日米の鉄鋼業界にとって大きなプラスとなるが、米の鉄鋼業の組合が強く反対し、『アメリカの顔を売るな』という議論になっている。
同社があるペンシルベニア州は大統領選の激戦区だから、トランプ氏は絶好の選挙キャンペーンとして買収阻止を利用しており、バイデン氏もすでに反対を表明している。“買収は米国にとってプラスなんだ”と日本側がうまくアピールできるかどうかが成功のカギとなる」
EV優遇撤廃はチャンス
だが、トランプ登場をうまく利用すれば、日本企業はピンチをチャンスに変えることができる。
その1つがエネルギー政策だ。気候変動対策に反対するトランプ陣営は、「これからは化石燃料の時代だ」と、米国が豊富に持つ石油や石炭など化石燃料の規制を廃して生産を最大化する方針だ。
「石油などエネルギー価格が下がれば、電力業界をはじめ、機械や鉄鋼などエネルギー消費の大きい業界にはプラスになるでしょう」(前嶋氏)
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