相続のトラブルにはいくつかのパターンがあり、失敗のリスクが高い家族、資産状況というのも大まかにタイプ分けできる。その中のひとつが、子のきょうだいが複数いて疎遠というタイプ。ちょっとした主張の食い違いから、骨肉の“争族”へと発展しかねない。このタイプでは、事前にどのような揉めごとが起きそうかを想定し、トラブルの芽を摘んだり、対立が最小限で済むような手当てをしておくことが有効だ。
家族内の相続トラブルの多くは「きょうだい間」で起きる。親が亡くなった時に同等の権利を複数人が有するため、普段から疎遠だと特に深刻な対立になりやすい。ただ、対立にもパターンがあるので、それを把握しておけば、うまく進めるための立ち回りができる。
具体的に何をすればいいか、Q&A方式で見ていこう。
目次
Q:どんな「きょうだいトラブル」が多いのか?
取材を総合すると「不要な財産の押し付け合い」「親と同居する長男と他のきょうだいの対立」「価値の高い資産の奪い合い」といったパターンがありそうだ。
1つ目の「不要な財産の押し付け合い」は、「親が地方の実家で独居」「子たちは都心暮らし」の状況下での“実家の押し付け合い”が典型例だ。
Q:実家の“押し付け合い”にどう備える?
吉澤相続事務所代表の吉澤諭氏が解説する。
「売れそうにない不動産、いわゆる“負動産”を押し付け合うのは“あるある”です。誰が相続するかが決まらないと、売却も相続登記もできない。この4月には相続登記が義務化され、3年以内に行なわないと10万円以下の過料が科されます。将来的に子たちが住む予定のない不動産であれば、早期に売却したほうが望ましい」
相続に詳しい税理士法人レディング代表の木下勇人・税理士も「売れない物件こそ最も揉めやすい」と語るが、だからといって放置すると解決の機会を逃しかねない。
「家族会議を開くなどするなかで、たまたま孫のひとりが実家近くの地方大学への進学が決まり、実家の活用、継承がうまく進んだ例もありました。家族会議でも解決策が見えなければ、親が遺言書で子のうちの1人に託すべきと思います。複数のきょうだいの共有名義で相続させても、売却時の合意や手続きが面倒になるだけです」(吉澤氏。以下同)
一方、「実家で親と長男が同居している」ケースでは、長男が実家の相続を希望すれば“押し付け合い”にはならないが、別の問題が発生する。