人材育成の「仕組み」も「箱」もない
かつてイギリスのサッチャー首相は「国際戦略研究所」の副所長時代に刻苦勉励して独自の政策理論を固め、首相に就任したら規制緩和、民営化、社会保障削減などの大胆な改革を推し進めてイギリス経済を再生に導いた。しかし、自民党には国際戦略研究所のような人材育成の「仕組み」も「箱(施設)」もないから、サッチャー首相のような優れた政治リーダーは永遠に出てこないだろう。
いくら派閥が政策集団として存続したところで、党に組織的な人材育成の仕組みや箱がないままでは、しょせん「徒党」に過ぎず、本質的な政策政党になることは不可能だ。
親などから地盤(後援会組織)・看板(知名度)、カバン(資金)の「三バン」を引き継いだ未熟な世襲議員、タレントやスポーツ選手出身の素人議員が多い自民党は、1年生議員~10年生議員ぐらいまでを対象に、有識者や先輩議員、外国の政治家などを講師に招いて政治家としての基本的な知識・教養と立ち居振る舞いから教えるべきだと思う。そうしなければ、自民党はいずれ今回と同じ轍を踏むことになるだろう。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。
※週刊ポスト2024年3月8・15日号