財務省が「霞が関最強の官庁」と呼ばれ、政治家をもコントロールできるのは、「予算」と「税」の強大な権限を握っているからだ。
主税局が「税制」を決め、国税庁が国民から税金を取り、集めた税金を主計局が「予算編成権」で他の官庁や政治家の地元に配分する。従わない政治家には国税庁の税務査察が待っている。予算と査察という“アメとムチ”で政治家を操ってきた。
そうして財務省の組織、人事の出世コースも、政治家に対抗する力を官僚に身につけさせることに主眼が置かれている。
入省したキャリア官僚は、20代後半のヒラ時代にいきなり地方の税務署長に抜擢され、多くの部下を率いる立場になる。現在は批判を浴びて署長就任を35歳前後に遅らせているが、次官、局長クラスの幹部たちは20代で税務署長を経験した世代だ。
「査察部長」で大臣にマウント
財務省取材の経験豊富なジャーナリスト・長谷川幸洋氏(元東京・中日新聞論説副主幹)が語る。
「税務署長時代の重要な役割は、地元選出国会議員の税務のチェックです。議員本人や支援者、後援会企業のなかに税務の怪しい者はいないかを探り、その情報を収集する。そうした情報を基に、ここぞという時に議員に圧力を掛ける材料にする。議員に問題がなければ、後援企業を締め上げる。そうすると後援企業は議員に泣きつきます」
若手の頃から政治家に対する“ムチ”の使い方を教え込まれるのだ。
「そうした税務調査のトップに君臨するのが東京国税局の査察部長です。東京国税局は日本の大手企業の多くを扱っており、様々な情報が入る。大物国会議員と関係の深い企業も多く、その会社の情報を把握することで、政治家の資金源がわかる。このポストは財務省でもエリートが本省課長かその手前で務めることが多く、たとえば大臣が自分についた秘書官の前職が査察部長だったと知ればギョッとなるわけです」(同前)
「東京国税局の査察部長でした」というだけで大臣に“マウント”を取ることができるのである。