日本発の世界的アウトドアブランド「スノーピーク」の業績が注目を集めている。2月中旬に発表した2023年12月期決算では、「純利益100万円」「前年同期比99.9%減」といった衝撃的な数字が大きく報じられたほか、「自社株買いによる非公開化を検討」などのニュースが世間を騒がせている。同社の業績悪化の理由としてコロナ禍が落ち着き、旅行や外出が正常化したことによる「キャンプ離れ」の影響が一部で指摘されている。
しかし、日本オートキャンプ協会が昨夏に出版した『オートキャンプ白書2023』によると、2022年の「年間キャンプ泊数(平均7.2泊)」、「年間回数(5.4回)」はいずれも過去最多だった。同書は、オートキャンプについて「年に一度、家族で出かける特別なレジャー」から、家族でも一人でも、気が向いた時に「それぞれのスタイルで出かける身近なレジャー」に変わりつつあると分析している。
そうした傾向が2023年の1年間で一変したとは考えにくく、スノーピークの業績悪化の理由も、一概に「キャンプ離れが起きたせい」とは言えなそうだ。そもそも、過酷な自然環境のもとで使い続けられるように設計されているキャンプ用品は頻繁に買い替えるものでもないため、一巡した結果、キャンプ用品の新規需要が落ち着いたとの見方もある。
では、現在、趣味としてキャンプを楽しんでいる人は、どんなきっかけで始めて、どんなスタイルで続けているのか。夫と小学生の息子3人で続けているという30代主婦のケースを、フリーライターの吉田みく氏が報告する。
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スノーピークが発表した2023年12月期決算によると、売上高は257億円(前期比16%減)、純利益は100万円(同99.9%減)だった。この発表を受け、報道やネット上では「コロナ禍が落ち着きキャンプブームが下火となった」などの声もみられたが、実際のところはどうなのだろうか。
千葉県在住の専業主婦・アヤさん(仮名、38歳)は、昨年末に夫と子供の3人でキャンプデビューしたという。
「キャンプを始めたのは、ご近所に住むママ友からキャンプ用品を譲り受けたことがきっかけでした。子供が中学に進んで部活や塾が忙しく、もう家族一緒に行かなくなったとか。使わなくなったグッズの収納場所に困っているとのことで、BBQコンロ、イス3脚、テーブル、炭や薪を一式くれたんです。さっそく近場で日帰りキャンプを試してみたら、すごく楽しくて家族でハマってしまいました」(アヤさん、以下同)