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【伝説のトレーダーによる日本経済大予測】日本に残された最後の未開拓市場、30兆~40兆円の「消費者余剰」に内需拡大のチャンスあり

日本における最後の未開拓市場となる「消費者余剰」

「内需は縮小」と言い続けてきましたが、実は私は内需にも若干の拡大のチャンスは残されていると思っています。それは「消費者余剰」と呼ばれ、日本全体で30兆~40兆円ぐらいの(私のドタ勘ですが)最後の未開拓市場(The last frontier)です。ただ、そのうちどのぐらいビジネスにできるかは未知数です。

 物の値段をオークションで決める時、いろいろな決め方があります。例えばEnglish Auctionでは一つの商品の値段が競り上がります。またDutch Auctionでは売る量を決めて最後の一個が売れる値段で全部の値段を決めます。「消費者余剰」は基本このDutch Auctionで発生します。

 工業化社会の到来で、工業製品を大量に生産するのが当たり前の世の中になりました。工業製品はユニット当たりのコストを下げるために工場である程度のロットで生産しますから、作った製品を全部売ろうとすると値決めはなんとなくDutch Auctionっぽくなります。

消費者余剰と需要曲線(直線)

消費者余剰と需要曲線(直線)

 図で「消費者余剰」を説明します。

 この製品を80個売り切ろうと思うと値段は20円になります。売上は20円×80個=1600円です。しかし、斜めの需要曲線(ここでは直線になっていますが)によると100円を出しても買いたいという人が1人います。でも値段が20円で決まったおかげで80円得をしたのです。この80円を「消費者余剰」と呼びます。全体の消費者余剰はこの三角形の面積で、80円×80個/2=3200円です。つまり一物一価でなければこの商品の潜在的市場は1600円ではなく1600円+3200円=4800円であったということです。

 この大きな消費者余剰を取り込む動きはもうすでに存在します。要するに一物一価にならないようにサービスを少し変えたりすればいいのです。芸能界や野球のファンクラブ、ディズニーランドの「プレミアアクセス」のチケット、予約のタイミングで価格設定を変える航空機チケットもそうです。

 工業化社会から情報化社会へと移り行く中でこの消費者余剰を取り込めるチャンスが増えてきました。典型的なのが投げ銭ビジネスです。すでにYouTubeでもニコニコ動画でも投げ銭の仕組みは導入されていますが、まだ試行錯誤中だと思います。成功のパターンを探しながら形を変えどんどん広がっていくのではないでしょうか。

 私は消費株の分析はあまり得意ではないので具体的な例は示せませんが、消費者余剰を上手に取り込める立ち位置にいる会社は投資対象として面白いと思います。

※清原達郎・著『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)より、一部抜粋して再構成

【プロフィール】
清原達郎(きよはら・たつろう)/1981年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業。同年、野村證券に入社、海外投資顧問室に配属。スタンフォード大学で経営学修士号(MBA)取得後、1986年に野村證券NY支店に配属。1991年、ゴールドマン・サックス証券東京支店に転職。その後モルガン・スタンレー証券、スパークス投資顧問を経て、1998年、タワー投資顧問で基幹ファンド「タワーK1ファンド」をローンチ。2005年に発表された最後の高額納税者名簿(長者番付)で全国トップに躍り出る。2023年、「タワーK1ファンド」の運用を終了し、退社。はじめての著書『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)が話題に。

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