1人だけ実家近くに住んでいる
都内在住のAさん(男性・50代)は3人きょうだいの末っ子で、実家の近くで妻子と暮らす。
父はすでに亡くなり、認知症の母(80代)は実家で一人暮らしだった。兄と姉は離れて暮らすため、Aさんとその妻が母を介護していたが、母の認知症が悪化したため、施設に入れることを決意した。ところが、兄と姉に相談すると、「母さんがかわいそう」「これまでできたのだから今後もできるはず」などと猛反対。勝手な言い分に堪忍袋の緒が切れたAさんは兄、姉を激しく非難し、きょうだい仲は険悪に──。
都内で在宅ヘルパーとして働く藤原るか氏が解説する。
「実家近くに住む子には親の介護の負担が集中しがちです。離れて住むきょうだいには実態が伝わりにくい。施設入所による経済的負担は重く、心情的に入所に反対したりするケースが多い。介護を担うきょうだいを無償ボランティアのように扱い、双方の溝が深まりやすい構図があります」
きょうだいの世帯収入に差がある
前出・曽根氏は経済的な部分の違いに着目する。
「親の介護や看護をする場合、経済的に豊かな子供は親の財産を使うことで自分たちの介護負担を減らそうとするが、収入が低い子供は親の財産をなるべく残し、死後に遺産をたくさんもらいたがる。そこで介護や看護の方針が噛み合わなくなるケースは多い」
相続の際も収入の差や経済事情がネックになる。
都内で親と同居する長女Bさん(女性・50代)は親の死後、自分が実家を相続すると思っていた。
だがBさん夫婦は経済的に余裕があるのに対し、次女は夫が会社をリストラされ、三女の夫も病気を患い、家計が悪化、収入が激減していた。
「2人の妹はBさんに対し、実家を売却してその代金を3等分することを要求しました。Bさんは抵抗しましたがその甲斐なく、結果的に実家を売却せざるを得ず住む家を失いました。Bさんは『妹2人に家を追い出された』と憤りましたが、妹たちは『姉が豊かなのは実家で楽に生活できたからだ』と譲らない。3姉妹の関係はすっかりこじれてしまいました」(曽根氏)