総務省「労働力調査 2023年(令和5年)平均結果」によると、若年層25~34才で「自分の都合のよい時間に働きたいから」を理由に非正規になったのは73万人。10年前の2013年(59万人)から14万人増えた。一方で、「正規の職員・従業員の仕事がないから」という理由の非正規は、2013年の84万人から2023年の39万人に減少。10年間でほぼ半減した。
つまり仕方なく非正規雇用を選ぶのではなく、あえて非正規を選ぶ若い世代が増加しているというデータだ。こうした“若者の正社員離れ”の傾向に、希望しても正社員の座を手に入れられなかった氷河期世代は何を思うのか──。
頑張れるのはギリギリ20代まで
「売り手市場なのに、なんてもったいないことを……」とため息をつくのは、IT企業勤務の男性・Aさん(45歳)。苦労して30代半ばにようやく正社員になったという氷河期世代の一人だ。
「僕たちの世代は、ベビーブームのピークは過ぎているといえど、まだまだ若者が多いのに、正社員求人が少ないのが特徴でした。そこそこの大学を出ても非正規を選択せざるを得ない人たちが本当に多かった。僕も途中で、『どうせ就活してもムダだ』と投げやりになって、フリーターになりましたが、それで頑張れるのはギリギリ20代までという印象です。
同世代がキャリアを積んでいく一方で、フリーターだと何の保証もないうえに、正社員との収入格差はどんどん広がっていきます。しかも30代になると、周囲から『で、何ができるの?』といった目で見られます。転職するにもいろんな経験を積まないとなかなか難しい」
Aさんは、自身が20代だった頃とは経済状況や価値観が変化していることは理解しているものの、「それでも、とりあえず正社員になっておいた方がいい」と声をあげる。理由は、自身がフリーター生活で体を壊したことがあるためだ。
「たしかに、正社員だと転勤になるかもしれないし、残業を強いられたりすることもある。自分の都合で生活できないことがイヤだと思うかもしれません。でも、それは一旦正社員になってから考えたらいいことです。正社員なら病気やケガをしても休職できますが、非正規はそうはいかない。あっという間に自分の生活がままならなくなります」(Aさん)