100才以上生きる「センチナリアン」の存在が決して希少なものではなくなった“人生100年時代”の到来は、働き方や健康意識、そして人生にどう幕を下ろすかまで、私たちの生活を大きく変えた。それは「美容」の分野においても例外ではない。アンチエイジングの最前線を紹介しよう。【全4回の第1回】
“美容を好むのは40才まで”の空気が変わっている
「20代の頃は、どの美容液を使っていたんですか? 私も、あと10年経っても20年経ってもシミのないきれいな肌でいたいから、同じものを買いたいと思って……」
百貨店のコスメフロアで、リクルートスーツを着た若い女性が話しかけると、ベテラン女性販売員の艶やかな頬がふっと緩み、目尻に柔らかい笑いじわができた。その様子を横目で見ながら、グレイヘアの女性が美容クリニックに予約の電話を入れる。受話器を取った受付の奥では、ごま塩頭の男性がほくろ取り施術の真っ最中だ。
「ここ数十年で、美容に関心を持つ人の幅は、確実に広がっています」
そう話すのは、美容皮膚科医として35年の経験を誇る田中優子さん。
「昔は美容医療を受けたり、ケア用品を細かく使い分けたりするのは“美”に対して意識の高い一部の女性だけでしたが、いまは自分にしっかり手をかけ、きれいな状態を保とうとする人が性別や世代を問わず増えています。
特にシニア層の変化は顕著で、脱毛やスキンケアに加え、『顔にできたシミを取ってほしい』と言って来院する80代のかたも珍しくありません」