がんに罹患したとき多くの人が心配するのが治療費のことだろう。経済アナリスト・森永卓郎さんは、昨年12月、がんを告知されたことを発表した。本誌・週刊ポストの取材で、森永さんは「公的医療保険適用の標準治療でがん治療をする」と話していたが、その後、自由診療に切り替えたという。森永さんにその経緯を聞いた。
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昨年12月にステージIVのすい臓がんを告知(註・現在は原発不明がんと診断)され、余命3~4か月と宣告されました。今年1月にポストさんの取材を受けた際は、「公的医療保険適用の標準治療でがん治療をする。がん保険や医療保険は不要で、高額療養費制度もあるので大丈夫。個室にも入らない」とお話ししたと思います。
(参考)森永卓郎氏、すい臓がん闘病で気づいた「保険がなくてもなんとかなる」 医療費は公的補助でカバー、生命保険は「60歳を過ぎたら不要」
基本的な考え方は今も変わりませんが、当時とは状況が変わってきました。現在、私はがん免疫治療のオプジーボ(保険適用)の投与と、自身の免疫を強化する血液免疫療法(自由診療)を受けています。自由診療では月150万円の自費負担があります。
“ケチだぬき”と呼ばれた私が高額な自由診療に踏み切った理由はひとつ。「今すぐ死ねない」事情ができたからです。
最も気がかりだったのは、私の経済アナリスト人生の集大成とも言える新著『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』(三五館シンシャ)の執筆が脱稿目前で止まってしまったこと。
昨年末、抗がん剤が合わずに生死の境をさまよう中で「この著作だけは何としても完成させなければ」との想いが強くなったのです。