ステージが高いからといって治療費が高額になるわけではない
例えば、「3大がん」の1つである肺がん。ステージIで「胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術」を受けた場合の費用は約49万円に上る(平均入院日数7.6日)。
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が言う。
「この手術は胸に小さな穴をいくつか開け、そこから細い管のような胸腔鏡(内視鏡の一種)や手術器具を入れて、画像でモニターしながらがんを切除します。大きくメスを入れる従来の開胸手術に比べて、身体への負担が少ないことがメリットです」
ステージIIIからIVの切除不能の肺がんは抗がん剤を使った治療が選択される。この場合の平均費用は約27万円だ。
「がんのステージが高いからといって治療費が高額になるわけではありません。むしろ初期のがんのほうが、術後の再発予防や治癒に向けた積極的な治療を行なうため、治療費が高額になる傾向にあると思います」(同前)
食道がんのステージIの場合、こちらも胸腔鏡下手術が主流となるが、平均費用は約94万円。平均入院日数も18.8日と長く、治療費は肺がんの2倍近く、ステージIのなかで最も安い大腸がん(約14万円)と比べると実に7倍となっている。
ただし、大腸がんと胆のうがんの場合、ステージIVの治療費のほうが高くなる。例えば大腸がんの場合、I期は肛門から入れた内視鏡でがんを切除する簡単な治療法に対し、IV期は3種類の抗がん剤とその作用を増強する薬の計4種類の薬を使う治療法だからだ。
近年は「ダ・ヴィンチ手術(ロボット支援手術)」や高価な抗がん剤を用いた治療、PET検査をはじめとする精密検査が増えており、「がんの治療費は高額化の傾向がある」(上医師)という。