税金はかかるのか、遺言書は必要か、贈与のためには何をすればいいのか……相続手続きはただでさえ複雑で、やるべきことが多い。だがそこに輪をかけるように、この4月からはルールが大きく変わる。この春本当にやるべきこと・知っておくべきことを完全解説しよう。
《相続した空家(土地・建物)、相続登記を行わずに放置していませんか?》
茨城県に住むAさん(61才)は、ポストに届いた自治体からのチラシの文言を見て、気がかりなことを思い出した。
「昨年亡くなった父は、小さな畑を持っていたんです。きょうだいはおらず母も他界しているので私が相続するのは確かなのですが、何をどうすればいいのやら……」(Aさん)
新年度を迎え、ただでさえ各種手続きが発生するこの時期。今年度からはそこに「不動産登記」が加わる。不動産を相続したときの登記が義務化されるのだ。
ベリーベスト法律事務所の弁護士・遠藤知穂さんが解説する。
「不動産登記法の改正により、4月1日以降は不動産を相続したことを知ってから3年以内の登記が義務づけられます。
この改正のポイントは、『4月1日以降に発生した相続』だけでなく、それ以前に発生した相続も対象になること。つまり、過去に相続し、登記せずにいた不動産も対象になるのです」
正当な理由なく登記をせずにいると10万円以下の過料が科せられる。税理士の板倉京さんが言い添える。
「これまで登記は義務ではなかったので、地方の畑など何代も放置されている不動産は珍しくありませんでした。ですが空き家の増加による周辺環境や治安への影響などから義務化に至ったのです」
登記状態が明確でない土地や長年放置していた先祖の家などがあれば、至急登記が必要だ。
だが登記の手続きは複雑。事前に準備しておかなければあっという間に3年が過ぎてしまうため、4月を迎える前に、手順をしっかり頭に入れておこう。