大学院こそ大人の学びの場に最適
そして2007年に早稲田大学大学院公共経営研究科に入学。
とはいえ、仕事をしながら、大学院に毎日通うのは難しかった。授業は火曜日と金曜日に集中させ、通える日は1限目から夜までみっちり勉強。いつもいちばん前の席に座った。
芸能人だからという色眼鏡で見られないよう、かなりまじめに勉強に取り組んだという。そもそも、授業がものすごく楽しかった。
「学ぶことは感動することなんだと実感しましたね」
しかし、卒業がかかった10万字の修士論文の執筆には苦労したという。というのもこのとき、舞台の仕事が入っていたのだ。
「時間的にも厳しいし、感情の切り替えが大変で、卒業を1年延ばそうかと考えていたところに、友人から卒業祝いの着物が届いて……。これでは延期できないと思い直し、何とか書き上げました。ただ、最後10ページぐらいに誤字脱字が集中していると教授に厳しく指摘されました。かなり追い詰められていたのですね」
大学院は自分でテーマを決めて主体的に勉強する場所。論文を書くためには大学が応援・サポートしてくれ、院生同士もテーマが別のため、利害関係がない。だからこそ協力し合え、友情を育めた。秋吉にとって最高の日々だった。
「“いまだな”と思ったタイミングに始めたことってやり遂げられるんですよね。私にはまだ興味深い研究テーマがたくさんあります。これからも大学院での日々を思い起こし、学びを続けていければと思います」
【プロフィール】
秋吉久美子/1954年静岡県出身。幼少期を徳島県、高校卒業までを福島県いわき市で過ごす。1996年に『深い河』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞に輝くなど受賞歴多数。映画女優人生を綴った 『秋吉久美子 調書』(筑摩書房)を出版。現在は、映画・ドラマ・バラエティー番組など、幅広く活動する。
取材・文/土田由佳
※女性セブン2024年4月4日号