さまざまな理由で若い頃に勉強ができなかった、無理矢理やらされる勉強はつまらなかった──そんな後悔を心の片隅に持ち続けていた人が、中高年になり、時間や経済的な余裕ができたタイミングで、“学び直し”をするケースが増えているという。実際に学び直しを実践した声優の佐々木望に話を聞いた。
急性声帯炎発症、逆境 が学びのきっかけに
19才で声優としてデビューすると、すぐに頭角を現し、22才のときには声優音楽ユニット「NG5」を結成。アイドル的な人気を博すなど、輝かしい活躍を続けていた佐々木。
しかし、40代に入り、転機が訪れる。長年声帯を酷使してきたことで、急性声帯炎を患い、声がうまく出せなくなったのだ。
「それまでトラブルがなかったので、のどのケアについて無自覚でした。でも、その発声法ではまた声帯を痛めると医師に言われ、発声や演技について基礎から学び直すことに。そのときの参考書に洋書があり、読み進めるうち、英語もまた勉強してみたくなったんです」(佐々木・以下同)
英語はもともと好きだったこともあって、めきめき上達。力試しに受けた、実用英語技能検定(英検)1級や、興味をもった全国通訳案内士試験に合格。もっと英語を勉強したい。そう思っているときに、大人でも大学に行く選択肢があることを知り、それならば大学に入ろうと思ったのだという。
「せっかく大学に行くなら “東京大学”──無謀は承知で“やりたい”気持ちを優先させて決めました」
44才のときだった。