多くを語らずとも、その人の“背中が語る教え”がある。元フジテレビアナウンサーで、現在は報道キャスターとして活躍している長野智子(61才)は、逸見政孝さん(享年48)の存在がなければ、いまの自分はなかったと振り返る。
「逸見さんはフジテレビの先輩アナウンサーで、私が入社した時期からどんどん人気が出て、『FNNスーパータイム』のメインキャスターを筆頭に、フジの顔としてキラキラ輝いている憧れの先輩でした」(長野・以下同)
しかし逸見さんは1988年に突如としてフリーアナウンサーに転身する。
「当時はアナウンサーが華やかにフリー転身という例もあまりなかったので、びっくりしました。その後逸見さんはあっと言う間に全局で活躍し、日本を代表するような名司会者になりました。
会社を辞めてもアナウンサーとしてあんなふうに仕事ができたら素敵だなあと。それまでなかった道を見せてくださった存在ですね」
逸見さんの活躍に背中を押された長野も、1990年の結婚を機にフリーに転向。しかしそれは新たな葛藤の始まりだった。
「もともと報道番組を希望していたものの、フジテレビ時代に『オレたちひょうきん族』に出演していたこともあって、ありがたいですが当然バラエティー番組への出演オファーばかり。
ほかの出演者は人生をかけてバラエティー番組にぶつかっているのに、私はどこかで“本当にやりたいのは報道なんだよな”と思いながら仕事をしている。そんな中途半端な自分にモヤモヤしていた頃、たまたま収録で居合わせた逸見さんに相談したんです」