日本銀行の17年ぶりの「利上げ」を受け、メディアの報道は「市民生活にどう影響する?」といった視点から大手銀行の普通預金金利の引き上げなどを取り上げたが、注視すべきところは他にある。日経平均が4万円超えの上昇相場のなかにあって、日銀の政策変更による影響の出方が“セオリーと違う!”と関係者の注目を集めているのだ。
市場のセオリーを覆した“植田式利上げ”
金利が上がると株価は下がる──それが株式市場の“セオリー”とされてきたが、日銀による17年ぶりの利上げで起きたのは正反対の動きだった。
金利が上昇して企業の資金調達コストがかさめば、業績を圧迫して株価上昇にブレーキがかかるもの。そうして日銀は過去にも、利上げ局面で株安を招いてきた。2000年にゼロ金利解除に踏み切った速水優・総裁(当時)や、2006年に量的緩和とゼロ金利解除に踏み切った福井俊彦・総裁(同)の前例では、ともに相場に冷や水を浴びせた。
だが、3月19日の金融政策決定会合で決定された「マイナス金利の解除」を含む利上げを受け、同日の日経平均株価の終値は前日より263円高で4万円台を回復。しかも、これもセオリーに反して1ドル150円台の円安が進行し、翌営業日には史上最高値を更新するなど円安株高が続いている。
2016年に始まったマイナス金利政策下では、民間銀行が日銀に預ける預金の一部に「マイナス0.1%」の政策金利が適用された。銀行が日銀に資金を預けると“手数料”が発生する状況を作ることで、銀行が市中に回す資金量を増やし、デフレ脱却を目指す政策だ。
今春の春闘では、賃上げ率が33年ぶりに5%超えを記録。賃上げを伴う物価上昇が見込めるとして、日銀の植田和男・総裁が政策の転換を図ったかたちだ。
市場のセオリーを覆した“植田式利上げ”は何が違ったのか。今後の株式市場にどのような影響があるか。市場関係者は早速、利上げで「上がる株」「下がる株」の新しい法則を探り始めている。