これから年金は毎年実質減額され、もはや公的年金では国民の老後の生活は保障できなくなってきた。それが隠せないとわかると、政府は、“老後資金は自分でなんとかしてくれ”といわんばかりに国民への投資推奨に力を入れている。
年金改正に先立って、今年1月にNISA(少額投資非課税制度)の非課税枠などが拡大され、折からの株価高騰を受けて初心者の株投資が増えている。さらに厚労省は国民が自分で毎月資金を拠出して運用する「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の拡充にも乗り出し、掛け金の拠出期間を従来の「65歳まで」から「70歳まで」に5年間延長する方針を固めた。
それならiDeCoの期間延長をフルに利用し、節税効果を最大化して老後資金を増やす方法を考えたい。
iDeCoは証券会社などの窓口で口座を開設し、毎月資金を積み立てて自分で指定した金融商品で運用する。商品は株や債券を組み合わせた投資信託などが選べる。
「家計の見直し相談センター」代表でファイナンシャルプランナーの藤川太氏がそのメリットを説明する。
「あくまで年金目的の制度なので、いったん払い込んだお金は原則、60歳まで取り崩せないが、税制面で3つの大きなメリットがあります。まず掛け金が全額所得控除でき、所得税や住民税が安くなる。次に通常は運用益に約20%課税されるが、iDeCoでは運用益も非課税です。さらに受け取る時も、一括でもらえば退職所得控除、年金形式で受け取れば公的年金等控除の税制優遇措置が適用できます」
仮にサラリーマンが給料から定期預金をしても税金は安くならない。だが、iDeCoで毎月積み立てると、積み立てた額が所得から控除でき、所得税と住民税を節税できる。
極論、たとえ運用益がゼロであっても、節税効果だけでメリットが出る。加入期間が長いほどメリットが大きいため、50代以降は加入する旨味は小さいとされてきたが、今回の延長で、50歳から加入しても20年運用できることになる。