田代尚機のチャイナ・リサーチ

「親日的だ!」と猛批判を受ける中国飲料メーカー「農夫山泉」の受難 騒動の発端はライバル企業創業者への追悼文か

パッケージが「京都東寺の五重塔に似ている」と指摘された緑茶(CFoto/時事通信フォト)

パッケージが「京都東寺の五重塔に似ている」と指摘された緑茶(CFoto/時事通信フォト)

騒動後の同社の株価の下落率は5%程度

 ネット言論はカオスだ。ちょっとした雑音が大きな台風に発展するようなことがある。ネットで起きている現象だけを根拠に「不況のせいで若者の間で不満が鬱積している」とか、「日本への悪意が拡大している」とか、安易に拡大解釈してしまえば、真実を見失いかねない。

 最後に農夫山泉の業績への影響について。不買運動に繋がっていないか心配する投資家も少なくないだろう。業績に敏感な投資家たちがこの問題をどうとらえているのか知るために、株価(香港上場、終値)の動きを示しておくと、ネット上で批判が拡散する直前の2月29日は44.40香港ドルで、3営業日後の3月5日には41.55香港ドルまで急落した。その後は底値を探る動きとなったが、3月28日には42.25香港ドルまで戻している。この間の下落率は5%程度と大きくない。

 飲料、食品メーカーの業績に与える風評の影響は決して小さくないが、ネット情報は消費者全体の世論を代表しているわけではない。過剰反応は禁物だ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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