「優しい人」として生きる時間が長い方がいい
最近では、長生きをするとか、健康になるためには「我慢」をするのが当たり前と考えられていますが、私はそうした考え方も、人に優しくなれない原因だと思っています。
自分にムリをして我慢の生活を続けるよりも、気分が良くなるような生き方をした方が、がんにならずに長生きができるかもしれません。結果的に長生きできなかったとしても、いい人とか、優しい人として過ごす時間が長い方が、人間にとっては幸せなことなのではないでしょうか?
私は高齢者専門の精神科医をしていますが、人に優しくしていないと、最後にそのツケが回ってくるのだな……と思える光景を何度も目にしています。
昔は大臣だったとか、社長だったという人でも、見舞い客がたくさん来る人と、まったく来ない人がいます。社会的地位やお金のあるなしが関係ない状態になったとき、その人の人間的な魅力がリアルに問われることになります。
高齢者の枕元で、見舞いに来た人が容態を心配するのではなく、遺産相続の相談をしているのは、何とも侘しいものです。
昔からの言い伝えに、興味深い話があります。人間は生まれた瞬間は、本人が泣いて、周囲の人が笑っているが、幸せな人の最後は、本人が笑って、周囲の人が泣いている……というのです。
幸せな人とは、人に優しくしてきた人なのではないかと思っています。
※和田秀樹・著『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部抜粋して再構成
【プロフィール】
和田秀樹(わだ・ひでき)/精神科医。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって、高齢者医療の現場に携わっている。主な著書にベストセラー『80歳の壁』(幻冬舎)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『感情的にならない本』(新講社)などがある。