人間関係を良好にするには、相手が何を求めているのかを読み取る能力、「共感能力」が必要だという。では、その能力が高い人と低い人では何が違うのか。また、共感能力を高めるにはどうすればよいのか。著書『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』が話題の精神科医の和田秀樹氏が解説する。
どうすれば相手の気持ちを想像できるのか?
相手の気持ちを想像するためには、相手が何を求めているのか……を読み取る能力を高めることが大切です。こうした能力を、心理学では「共感能力」といいます。
共感能力とは、相手の立場に立って相手のニーズが想像できたり、相手の喜怒哀楽などの感情に寄り添って、シンクロできる能力を指します。
世界的ベストセラー『EQ こころの知能指数』の著者である心理学者のダニエル・ゴールマンは、共感を次の三つに分類しています。
【1】「認知的共感」相手の視点を理解する
【2】「情動的共感」相手の感情を理解する
【3】「共感的関心」相手が何を求めているかを察知して理解する
この三つの共感の特徴を、簡潔にお伝えしておきます。認知的共感とは、相手が考えていることや、感じていること、その行動の意図などを、自分の立場から見るのではなく、相手の視点に立って、「推測」→「理解」→「対応」することをいいます。
相手の視点で相手を見ることから「視点取得」ともいわれます。情動的共感は、相手の感情を推論して、理解することです。
悲しんでいる人に寄り添っていたら、自分も悲しくなったとか、喜んでいる人に接していたら、幸福感が得られたという現象を指します。
認知的共感が、「相手の立場に立って、その感情を理解する」のに対して、情動的共感には「相手の情動(一時的で急激な感情の動き)を理解して、自分の感情として受け入れる」という違いがあります。
共感的関心とは、相手の考えや情動を、相手が感じたまま、意図するままに察知して、同じ目線で理解しようとする姿勢を指します。
相手の考えを好き嫌いなどで判断することなく、自分の考えを押し付けたり、修正を求めないことが重要とされています。
こうした三つの共感の違いを理解して、相手の状況を注意深く観察することが、相手の気持ちを理解するための第一歩です。
「相手は何を考えているのか?」→「それをどう感じているのか?」→「自分に何をしてもらいたいと思っているのか?」……という三つのステップを踏むことによって、相手の気持ちに上手に寄り添うことができます。