時間も「コスト」として考える
さて、先ほどの3つのパターンを理解した上で、投資タイミングに話を進めます。僕が投資をやっていて常々思うのは、株を買うのは本当に簡単だということです。PERの低い株、成長が見込めそうな株を見つけて「何これ、安い!」と注文を出す。ここまでは誰にでもできます。
問題はそれを売る時です。あまり意識されていない方もいるかもしれませんが、投資の成果を評価する際には、時間もコストのひとつとして考えられます。買値から2倍で売れた投資があったとしても、利食いまでに5年かかっていたとすると、1年あたりの利益は20%ということになります。
一方で、3カ月で10%の利益を出せた投資があれば、1年で40%のリターンが出ることになりますから、先ほどの5年で2倍よりも効率のいい投資だったという風に考えられるわけです。
多くの人は損をすることが悪いことだと考えているかもしれません。でも本当に一番ダメなのは、上がりもせず下がりもせず、ただ時間だけが経過していってしまうことなのです。
目論見が明確に外れ、これは損切りしたほうがいいなという判断ができるなら、また次の新しいアイデアを考えて取り返せばいいので、それはそれでいいのです。しかし、買ってから何も動きがなかったというのでは、少なくとも株価的には次の行動を起こすための材料がないわけですから、ポジションの動かしようがありません。
その間にも相場では次々に新しい動きが出ているのに、そういう動かない株に資金を拘束されていることによって、みすみす機会を逃すことになってしまいます。
なので、僕が新規に投資をする時には、その株が「いつ上がるか」ということを必ず想定してから入ります。もちろん、「この株価で買っておけばいつか上がるだろう」という考え方も否定はしませんが、「勝つ投資」を目指す上ではご法度です。
狙いどおりの業績が出てきても、それが先ほどの3つのパターンの起点にならなければ、それも目論見が外れたうちに入ります。自分の中では「素晴らしい決算だ! やはりこの企業は期待できる」と思えても、それが他の投資家には共感されない、独りよがりな妄想である可能性ももちろんあり、その場合は株価はついてきません。
そうなった時は、なぜ評価されなかったのかをよく考えて、さらに次の決算まで待つか、あるいは諦めるかの判断をします。この時、株価が含み益か否かは関係ありません。上がるはずだと思えば持ち続ければいいし、やっぱり違ったかもしれないと思ったら売る。それ以外の選択肢はないのです。
ストーリーはなるべくシンプルに
そう考えると、株価上昇のストーリーはなるべくシンプルなものがいいということになります。
その昔、企業が持つ土地の含み益に着目した「含み資産相場」というのがありましたが、あれは投資ファンドが実際にいくつかの企業の株を買い集めて世間の注目を集めたことにより、「提灯買い」が大量について引き起こされたものだと考えています。
どんなに含み資産があっても企業にそれを有効活用しようという意思がなければ株価に反映させることはできませんが、ファンドの介入によってそれが実現されるかもしれないという期待が生まれたために、株価が動いたわけです。そのようなことでもなければ、含み資産があるというだけではなかなか株価は上がってくれません。その企業に莫大な含み資産があるなんてことは、普通の人は知らないし調べようともしないからです。
その点、スマホゲームのランキングは実にわかりやすい指標といえます。毎日更新されるアップルやグーグルのアプリストアでランキングの上位に来ているゲームの企業はとてつもない利益を叩き出しています。そんな株式市場における新ルールをガンホーやミクシィが示したために、多くの人がゲームのランキングに着目するようになりました。
その結果、何が起こったかというと、「ゲームの事前予約がスタートした」というだけで株価が上がるようになり、果ては「これからゲームをつくります」と発表するだけでストップ高になったりする珍現象が見られるようになりました。実際にはまったくユーザーがつかずに消えていくゲームだってたくさんあるのに、まだ出てもいないゲームの可能性を織り込んで株価が上がるようになってしまったのです。