貯蓄から投資へ──国を挙げた資産所得倍増計画のもと、1月からスタートした新NISA(少額投資非課税制度)。いまや成人の5人に1人が利用しており、その追い風となるかのように、日経平均株価は「バブル超え」を記録、市場は大いに沸いている。
“伝説のサラリーマン投資家”として金融界で名をはせてきた清原達郎さんは「『やらなきゃ絶対損』という個人にとっては夢のような制度」と語る。
清原さんは、野村證券やゴールドマン・サックス証券などを経て、ヘッジファンド(顧客から預かった資産にさまざまな運用で利益を出す投資会社)に移籍。運用したタワー投資顧問の「K1ファンド」では、25年間で93倍という驚異のパフォーマンスを叩き出し、2005年に発表された最後の「長者番付」ではサラリーマンとして初の1位(納税額37億円)に輝いたカリスマ・ファンドマネジャーだ。2023年にはファンドを閉鎖して引退を表明。
その後は800億円超の個人資産を築いた投資家としてのノウハウを初の書籍『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)にまとめ上げた。3月上旬に上梓された同書は、発売わずか3日で12万部を超えるベストセラーとなった。新NISAの運用法から、日本経済の行く末まで、いま抜群の注目を集める、伝説の投資家が指南する。
現預金の価値は下がり続ける
「バブル超えの株高」が続き、日本経済はにわかに好景気になったかのように思えるが、清原さんの見通しは決して明るくない。
「人口が減り続けている日本において、今後経済状況が成長軌道に戻ることは永遠に訪れないでしょう。 長期的な実質GDPの伸びはよくて横ばいだと考えられます」(清原さん・以下同)
日銀は3月19日、17年続いたマイナス金利解除を決定した。これを受けて三菱UFJ銀行や三井住友銀行は普通預金金利を上げたが、清原さんは今後も日本の低金利は続くとみている。
「預金金利はこの先もゼロに近い状態が続く見通しです。つまり、現預金のまま資産を持っていても物価高に追いつかず、価値は相対的に目減りする」
加えて今後もさらに高齢化が進むことは明白で、介護費用や医療費といった社会保障費の増大も避けられない。そんな将来への不安に備えて、新NISAを活用すべきなのだ。
最大のメリットは、新NISAは、配当や売却益が非課税になり、その期間も無期限であること。
「通常の課税口座では、利益に対して約20%の税金がかかります。私は個人で大量の株を保有しているので、税率は総合課税で55%にものぼる。
ですが、新NISAは運用益が非課税。投資の限度額は1人1800万円で、そのうち成長投資枠の年間限度額は240万円ですが、例えばこの枠をめいっぱい使って買った株が10倍になり、資産が2400万円になったとしても税金は一切かからない。これは夢のような話です」