保険適用となる範囲が近年拡大している
だが医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう言う。
「陽子線治療や重粒子線治療の対象である主ながんは、保険適用の従来の放射線で治療できるケースがほとんどです。新幹線でたとえれば、従来の放射線が『こだまの自由席』なら、照射回数が少なく身体への負担も少ない陽子線・重粒子線は『のぞみのグリーン席』。お金に余裕がないのに無理して選択する必要はないでしょう」
実際にがん患者が陽子線・重粒子線治療を受けるケースは少ない。大手生保会社での勤務経験があり、保険に関する著書も多いFPの横川由理氏が説明する。
「2023年12月の厚労省会議資料によると、先進医療として陽子線治療と重粒子線治療が実施された件数はそれぞれ824件と462件でした。同年のがんの全罹患者数のわずか0.13%にとどまる計算です」
陽子線や重粒子線治療が保険適用となる範囲が近年拡大していることにも目を向けたい。
「2022年4月から、手術で切除不能な大型の肝細胞がんなどが保険適用となりました。自己負担は1~3割で済み、さらに高額療養費制度が使えるので、月の医療費は8万円程度(収入により異なる)まで軽減できます。がん治療は基本的に保険適用の標準治療で十分なケースが多いので、まずはそちらを優先的に検討すべきでしょう」(上医師)
高額治療費という言葉に惑わされることなく、保険の必要性を見極めることが重要だ。
※週刊ポスト2024年4月26日号