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【日本社会を襲う人手不足問題】外国人人材受け入れ拡大がもたらす「若年層は外国人、年配者は日本人」のいびつな社会

生産性向上の取り組みだけでは不十分

 むしろ現実的であり、急ぐべきは労働生産性の向上だ。就業者1人1人が現状より能力を向上させることで、就業者数の減りをカバーするだけでなく、より経済成長しやすい環境をつくり上げるのである。

 労働生産性を向上させるには、就業者個々に対する知識教育や職能訓練が必要となる。並行して取り組むべきは全体の仕事量の削減だ。デジタル化による省力化や業務の無駄の削減の徹底が求められる。

 だが、これらだけでは不十分だ。全体の仕事量の削減には、事業の統廃合や企業の再編も含まれる。非効率な分野からの撤退が必要となる。

 業務量を減らすことで、就業者が減っても人材に余裕を持たせることができる。こうして生み出した人材を成長分野へと投入するのである。これができなければ、人口減少社会において経済成長の実現は難しくなる。

 就業者数の減少は、最終的には社会の作り替えを迫ることとなる。働き手の総数が減っていく以上、すべてを現状通り維持することはできないためだ。企業の生産性向上はもとより、地域ごとの集住やコンパクトな都市形成といったことまで求められるようになるだろう。

 甘い推計に安堵して現実逃避したり、つじつま合わせのような政策を繰り返したりしていても出口は見つからない。就業者不足で社会機能が停滞する事態に陥る前に、真の対策を推進することである。

(了。前編から読む

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。主な著書に、ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。

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