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【年金増額のまやかし】年金受給額は年1.4万円の“実質減額”になっている 物価上昇率や賃金上昇率よりも低く抑えられる2つのルールが発動

本来なら厚生年金の受給額も物価と同じく3.2%(7183円)引き上げられるべきだが、実際は2.7%上昇の6001円の増額。その差額1182円が不足していると考えると、年間では1万4184円もの実質的減額

本来なら厚生年金の受給額も物価と同じく3.2%(7183円)引き上げられるべきだが、実際は2.7%上昇の6001円の増額。その差額1182円が不足していると考えると、年間では1万4184円もの実質的減額

ダブルで年金を減額する仕組み

 急激な物価上昇で賃上げが追いつかないのは百歩譲って理解するとしても、年金の上昇率がそれよりも低い数字にとどまっているのはなぜなのか。

 そこには「マクロ経済スライド」という仕組みがある。社会保障制度に詳しい、慶應義塾大学商学部教授の権丈善一さんが説明する。

「例えば、ちびまる子ちゃんの家族で考えてみましょう。世の中で物価と賃金が等しく3%上がったとします。そのときに祖父・友蔵の年金が3%上がれば、それは“実質価値が保障されている”といえる。しかしいまの日本の年金では2.7%しか上がりません。その差額0.3ポイント分が“実質価値の減額”という意味です。

 その分はまる子ちゃんの将来の年金に友蔵から“仕送り”され、まる子ちゃんの受け取る年金が増えることになります。これが2004年に導入された『マクロ経済スライド』です。そうした孫、ひ孫への仕送りの仕組みをつくることで、まる子ちゃんやその先の世代の人たちが年を取ってからも、生活の柱になる年金の給付水準を保障することができるようになりました」

 0.3ポイントの“減額”を行ってまで孫やひ孫への仕送りが必要になった背景には、少子高齢化で年金受給者が増加する一方で制度を支える働き手が減り続けていることにある。

「現役世代が減っているいま、彼らの賃金よりも年金受給額を増やすのは不可能なので、平均寿命の伸びや経済状況を考慮して給付額を調整する」というのが、マクロ経済スライドの理屈なのだ。

「日本では長らく物価が上がらないデフレ経済が続いてきたため、制度として導入された後も、マクロ経済スライドが発動することはほとんどなく、年金受給額が実質的に減らされることもほぼありませんでした。しかし、ここ2年ほどで急激に物価高が目立ってきたため、発動せざるを得なくなったのです」(蒲島さん・以下同)

 振り返ると2023年度の受給額は67才以下が賃金上昇率より0.6%、68才以上は物価上昇率より0.6%低く改定された。今回は賃金より0.4%、物価より0.5%低くなった。

 止まらない年金減額の背景には、マクロ経済スライドに加えて2021年の制度改正時に施行された新たな「年金減額ルール」もある。

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