100万口座開設の目標は「控えめな数字」か
近年は様々な“異業種”が同様の狙いで銀行業に参入している。
航空業界ではJALがマイレージ会員限定の「JAL NEOBANK」サービスを展開。高島屋やヤマダホールディングス、オープンハウスなども同様のサービス展開に乗り出している。
「銀行の決済機能を自社に取り込むと、顧客の資金の流れを把握できる。そうすれば、新たなサービスの創出も期待できるため、参入が相次いでいるわけです」(森岡氏)
ただ、今回のJR東日本の参入は、これまでのものとは違ったインパクトの大きさとなりそうだ。メガバンク関係者はこう漏らす。
「PayPay銀行などのネット銀行や小売業など異業種からの参入は、ネット世代の若年層は取り込めても、大手銀行の主要顧客である中高年層まで切り崩す脅威とはなっていなかった。
それが今回は違います。全世代にとって身近な存在であるSuicaの発行元であるJR東日本が“特典攻勢”などをかければ、大量のユーザーを取り込める可能性がある。シニア層にとっても、今あるネット銀行より口座乗り換えのハードルは低いはず。JR東日本は当初目標として100万口座開設を掲げているが、Suica発行数の1%に過ぎず、控えめな数字に感じられます」
メガバンクの個人口座数は各行2000万~4000万を誇るが、Suicaのユーザー数を考えれば、そこが将来的に大きく切り崩されていく可能性もあるのだろうか。
(後編に続く)
※週刊ポスト2024年5月3・10日号