人生100年時代、最晩年に大きなリスクとなるのが「認知症」だ。
「認知症になると突然死のように資産が凍結され、自分の資産なのに預金が引き出せなくなります。自宅売却もできなくなるので、施設入居のための一時金の捻出にも困難が生じてしまうのです」
そう指摘するのは『日本一シンプルな相続対策』(ワニブックス)の著書がある税理士で、“相続博士”こと牧口晴一氏だ。
「だからこそ、認知症になってからも築いた資産が自分のために活用される備えが大切。有効なのが『家族信託』です」(以下、「 」内は牧口氏)
家族信託とは、認知症介護が必要になった親に代わって、子供が親の財産の管理や処分ができるようにするといった契約だ。「親の介護のため」などの目的に沿う必要があり、請け負う子供は無報酬でも、制度利用のメリットは大きいという。
「家族信託は、介護のための“生前相続”のようなかたちとなります。遺言書は亡くなってからしか役に立たないが、家族信託の契約なら、贈与税なしで生前に財産の名義を子供に変えられます」
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