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【認知症リスクへの備え】「家族信託」は介護のための“生前相続” 生前に財産を子供名義に変更でき、介護費用や介護施設入居費の捻出も可能に

成年後見制度は長生きが負担増に直結する

 家族信託を結ばないまま認知症になってしまった場合、家族は「成年後見」の制度を利用することになるが、こんなリスクがあるという。

「成年後見制度は初期費用に加えて、月々のランニングコストが3万~6万円、10年間で400万~700万円程度かかります。長生きが負担増に直結するうえ、成年後見人を一度選ぶとやめられないという難点もある」

 メディアが家族信託を取り上げる際は、「再婚した配偶者に連れ子がいるが、実子に資産を配分したい場合」などの事例が紹介されることも多いが、牧口氏は「ごく普通の家庭で、認知症リスクへの備えとしての効用が大きい」と指摘する。

「認知症に伴う介護や相続の問題は、親子が別に暮らすごく普通の家庭で起こります。だからこそ、認知症になった親の資産を、子や孫が触れない状態にしてしまうのではなく、家族信託を結んで活用可能にしておくべき。自ら増やしてきた資産を最晩年まで有効活用する備えがあって初めて、資産寿命を最大限、延ばしたといえるのです」

【プロフィール】
牧口晴一(まきぐち・せいいち)/1953年生まれ。税理士・行政書士。牧口会計事務所代表。「相続博士」の異名を持つ。

※週刊ポスト2024年5月3・10日号

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