交通事故の総数は減少、自転車事故は増加
ではなぜ、自転車による交通違反の取り締まりが厳しくなるのか。
「近年、交通事故自体の件数は減っているのに、自転車関連の事故の件数は増加しているからです」とは、自転車活用推進研究会理事の疋田智さんだ。
警察庁の調べによると、2023年度の自転車関連事故は約7万2339件で、前年より2354件増え、自転車乗用中で事故死した人も前年比7人増の346人となった。子供の事故だけでなく、自転車事故全般の件数が増加しているのだ。
「これまでも、上記にあげたような交通違反についての罰則はありました。たとえば、傘差し運転が原因で歩行者などにけがをさせた場合、本来は刑事責任と民事責任を負う可能性があり、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金などが科されてきました。ところが、これらの罰則が実際に科されたことはほとんどありませんでした。悪質な違反運転をし、さらに警察の注意を無視するなどして、3年以内に2回捕まると、『自転車運転講習』を受けなくてはなりませんが、その程度で済まされてきました」(疋田さん)
このままでは交通違反が増える一方だということで、「青切符(反則金)」制を導入。罰則の金額自体は低くなるが、取り締まりは強化していく狙いがあるようだ。これまで通り、見逃されると思ったら大間違い。ルールを頭に叩き込んでおこう。
【プロフィール】
疋田智さん/自転車活用推進研究会理事。自転車に関する著述活動で知られる自転車ジャーナリスト。博士(Ph.D.環境情報学)。学習院大学、東京都市大学、東京サイクルデザイン専門学校などで講師を務める。『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)ほか著書多数。
取材・文/前川亜紀 イラスト/飛鳥幸子
※女性セブン2024年5月9・16日号