駐車に関するトラブルは多い。そのひとつが、私有地に無断で駐車されたというもの。もちろん無断駐車は不法行為だが、それに腹を立てて仕返しをしてしまうと、さらなるトラブルにつながるケースがある。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
私有地に無断で自動車を駐車する人がいます。先日、あまりにも長時間止めているので腹が立ち、私有地に鎖を張って自動車が出られないようにしたところ、無断駐車をした人が「鎖が張ってあるから出られない」と文句を言ってきました。「無断駐車をする方が悪い」と言うと、「自動車が出られないようにされたと訴える」と逆ギレされました。もし訴えられたら、私の方が悪いと判断されるのでしょうか。(京都府、48才・女性)
【回答】
いまの状態が膠着したまま継続すると、あなたの分は相当に悪くなります。他人の土地に無断駐車することは土地所有権の侵害です。駐車している場所が道路状態で個人の所有地とは思えないような場合を除き、無断駐車している相手は、故意または過失であなたの土地を侵害する不法行為をしていることになります。ですから、無断駐車の人物に対して、あなたは自動車の撤去を請求できます。もし無断駐車で損害を被っていればその賠償も請求できますが、実際には損害がいくらになるかの証明は難しいと思います。
ここで重要なのは、あなたは自動車の撤去を請求できても、自動車の移動を禁じる権利はないということです。有料駐車場の場合であれば、駐車場経営者は駐車料金を支払うまで自動車を留め置く、留置権という権利を取得します。しかし、あなたは車を預かったわけではないので、仮に損害賠償を請求できるとしても、自動車を動かさないようにする権利はありません。
現在の状態のそもそもの原因が無断駐車した相手にあったことは間違いありませんが、あなたが鎖で塞ぎ、相手の自動車が出られないようにすると、今度はあなたが他人の自動車を占有することになります。