「大手と中小零細で二極化」する働き方改革への対応
中長距離のトラックドライバーを思うように増やせないなかで、働き方改革で労働時間を減らせば、何が起きるのか。
「企業間輸送が滞ることで、たとえば、産地直送の魚介や野菜などがスーパーに並ばなくなったり、工場に原材料が納期通りに入らなくなったりといったことが起こり得ますが、始まって1か月なので、私たちの生活ベースではまだ目立った影響は出ていません。現時点で見えているのは、トラックドライバーの収入が減ったこと。ただでさえ下がる一方だった賃金が、さらに下がっているのです」
かつてトラックドライバーは“稼げる仕事”とされていたが、過当競争によって運賃・料金が下がり、トラックドライバーの収入は減少の一途を辿ってきた。厚労省の令和3年「賃金構造基本統計調査」によると、全産業の平均年収489万円に対し、中小型ドライバーは431万円、大型ドライバーは463万円で、他産業と比べて約1〜2割低い水準である。
そこへ時短によって労働時間が減ったため、さらなる収入減が起きているという。
「大手と中小零細で二極化していて、大手の場合、複数の経営幹部に聞いたところでは、『給料を上げることはできないが、下げることはしない』というスタンスでした。むしろ2024年問題を理由に、荷主に運賃値上げの交渉ができるので、チャンスと捉えている。しかし、中小零細は直撃を受けています。4月の施行に備え、それ以前から労働時間短縮に取り組んできた会社では、給与が5万〜6万円下がったという話も聞いています。もう生活できないという悲鳴があがっています」
仮に元請けの大手が運賃を値上げできても、運送業界には多重下請け構造があり、三次請け、四次請けが当たり前で、末端の中小零細には値上げの恩恵が届かないという。
では、トラックドライバーは収入減にどう対応しているのか。