建物と住民「2つの老い」が深刻化
大都市圏の空き家は、マンションやアパートといった共同住宅が“主役”だ。空き家といえば、「朽ち果てた一戸建ての木造住宅」とのイメージを抱きがちだが、実は全体の55.8%が共同住宅(502万3500戸)なのである。東京都(87.5%)や大阪府(72.8%)はかなり高い数字となっている。
共同住宅の空き家は、一戸建てと比べて近隣者に影響を及ぼしやすい。大規模修繕や建て替えに向けた居住者の合意形成を難しくするためだ。高齢者が孤独死し、相続した所有者が不明となるケースは少なくないが、管理費や修繕積立金の支払いが滞ることになれば資金計画に大きな狂いが生じる。
計画通りのメンテナンスができなければ資産価値が下がるだけでなく、外壁の剥離などによって思わぬ事故やトラブルが発生することにもなりかねない。
そうでなくとも、国土交通省によれば2022年末時点で築40年以上のマンションは125万7000戸あるが、2042年末には445万戸に増える見込みである。建物と住民の双方が“高齢化”する「2つの老い」が深刻化している。
空き家は今後、さらに増える見通しである。野村総合研究所は2038年には空き家率が21.2~32.0%に上昇すると試算している。
一方、住宅・土地統計調査で過去の空き家率の推移を確認すると、前々回調査(2013年)が13.5%、前回調査(2018年)は13.6%だ。今回調査で過去最高を記録したといっても13.8%であり、前回と比べて0.2ポイント上昇したにすぎない。
頭打ち状態に見えるのにはカラクリがある。分母である住宅総数が、空き家数以上に増えているのだ。