親孝行のつもりで介護に励んで不幸になるケースも
早い段階で「地域包括支援センター(以下、包括)」などに相談することが重要だが、それをせずに親孝行のつもりで介護に励んでかえって不幸になるケースは少なくない。都内に住む50代男性が声を落として語る。
「父の死後、ひとり暮らしをしていた母が認知症を発症したんですが、症状が次第にひどくなって何度も警察の世話になったので、妻とまだ幼い子を自宅に残し、週末や祝日は実家に泊まり込んで介護をしていました。仕事を続けながらです。
ただ、ワンオペの育児となる妻の理解が得られず、『あなたは父親でしょ』と詰め寄られることがありました。私も介護のイライラから妻と衝突することが多くなり、ついには離婚届を叩きつけられました」
こうした事例は枚挙に暇がないという。数々の悲惨な現場を見てきた川内氏はこう言う。
「介護をひとりで担った娘が自分の貯金を使い果たしてしまうケースや、しつけが厳しかった親が認知症になりルールを守らなくなったことにショックを受け、子が親に暴言を吐くようになった例があります。
介護離職して実家近くに引っ越して転職したものの職場になじめず、『親のせいでキャリアを失った』と逆恨みして親に暴力を振るうようになった子もいます。これらはすべて、親との距離が近いがゆえに起こった悲劇だと思います」
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