喜劇役者の大村崑さん(92)は昨年12月、それまで住んでいたマンションから夫妻で自立型有料老人ホームに引っ越した。頭脳も肉体も老いとは無縁というが、入居した背景には「親は親、子供は子供」との考え方があったと明かす。
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92歳になった今でも、20kgのダンベルを2つ持ってスクワットするくらいだし、女房もまだまだ元気。生活面では何の問題もありませんでした。
そうしたなかでホームに引っ越したのは、それまで長く住んでいた大阪・箕面のビルから、他の入居者やテナントが出てしまって、私と女房の2人だけになったからなんです。以前は1階が店舗で夜も明るかったけど、今は真っ暗で誰もいない。住んでいた6階まで上がろうと思っても、夜遅くにエレベーターの陰に誰かが隠れていたら……と不安になってね。最近は高齢者の住居に強盗犯が侵入したり、物騒な世の中ですし、僕も地元では知られた存在ですからね。事件に巻き込まれないとも言えないし、「物音がしなかった?」と不安になったり、身の危険を感じるようになったんです。
そんな時、住んでいたビルの近くに新しい建物ができていた。女房と「何ができたんだろう」と話していたら、高級老人ホームだというので見学に行ったんですよ。そうしたら24時間明かりがついていて、玄関に警備員がいる。受付の女性がいつも「おかえりなさい」「いってらっしゃい」と声をかけてくれるわけです。高級施設なので医療施設はもちろん、シアターや娯楽施設、大浴場からレストランまでありましたが、警備面の不安がないのが何より大きかった。夫婦で気に入って、トントン拍子で入居を決めました。