コロナ禍でテイクアウト総菜が進化
中華・和食・洋食の価格を比較した結果、いずれも、スーパーやコンビニなどで買えるテイクアウト総菜(中食)のコスパが最もいいことがわかった。
しかし味や健康面はどうなのか──中食や外食はかねて、カロリーや脂質、塩分量が多く、毎日食べていては健康に悪い、味に飽きがくる、などといわれてきた。だからこそ、素材の産地を吟味できたり、塩分量などを調整できたりする、手作りの食事がもてはやされてきたわけだが、実はここ数年で、中食の質が大きく変化したという。
「コロナ禍によって2020年以降、外食が自粛され、食事の選択肢が手作りか中食かに限定されました。このときスーパー各社は、外食ができないなら、レストランで出されるような料理を中食として提供しようと、新メニューの開発に着手したのです。いわば、“外食代行業”です。
素材を厳選することはもちろん、塩分量を減らして素材本来の味を生かしたり、有名店のシェフと組み、テリーヌや鴨肉のローストといった、家庭では作れない“高級料理”を作ってスーパーの総菜売り場に並べました。すると、自宅でレストラン並みのおいしい料理がリーズナブルに食べられると評判となり、定番化。これを機に中食のクオリティーが上がり、総菜市場を拡大させました」(日本惣菜協会専務理事・清水誠三さん・以下同)
家庭料理はほぼまかなえる品揃えに
コロナ禍により、中食の高級化が進んだが、時を同じくして、家庭料理の品揃えも豊富になっていったという。
「そもそも中食は、共働き女性や単身世帯、高齢夫婦世帯が増え始めた2000年代から需要が伸びていきました。それでも当時は、基本的な食事はあくまで手作りし、手間のかかるメイン料理の1品、たとえばから揚げやコロッケ、餃子などだけ総菜に頼る、という使い方をしている人が多かったのです」
しかし最近は、中食が定着して総菜を買うことに抵抗がない人の方が増え、食事のすべてを中食で済ませる人も出てきたという。
「それまでは家庭で作るのが当たり前とされ、中食ではあまり注目されてこなかった煮物やおひたし、焼き魚などの魚料理の需要も増えてきました」
作るのがさほど手間ではない家庭料理ですら総菜として求められるようになった結果、品揃えが増えていったのだ。
「総菜の役割のひとつは、家庭に笑顔を増やすことだと思っています。疲れた体にむちを打ち、時間と手間をかけて料理をするよりも、安くておいしい総菜を買うことで家族との団らんの時間が増えた方がいい。そういう考え方が浸透すればいいなと思います」