「ダウンサイジング」や「実家じまい」が盛んに叫ばれる昨今、自宅売却にはさまざまな誤算がつきまとう。不動産調査会社の東京カンテイによれば、東京都心6区(千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷)の4月の中古マンション平均価格は1億1588万円(70平方メートル当たり)と15か月連続で上昇した。一方、首都圏全体(東京、神奈川、埼玉、千葉)では同4606万円で、前月より下落している。住宅ジャーナリストの山下和之氏が言う。
「中古住宅価格の上昇は東京23区に限られ、首都圏全体ではピーク時に比べると下落傾向が顕著になっています」
今後金利が上昇すれば、中古住宅が売れ残り、本格的な下落につながる可能性もある。そうなれば、特に築年数の古い物件は買い叩かれやすくなる。
不動産会社経営の人気YouTuber「不動産Gメン滝島」こと滝島一統氏のもとには、最近、中高年からの持ち家売却や住み替えの相談が多く寄せられているというが、「業者の『今、売却すれば高く売れる』といった営業トークには慎重な判断が必要です」と警鐘を鳴らす。
「電話やDMで『ご所有の物件を求めている方がいる』と勧誘するケースも目立ちますが、ほぼ嘘と考えたほうがよい。仲介を依頼後『買い手が見つからない』からと、買取価格のディスカウントを提案してくる業者も少なくないのが現状です」
仲介手数料、印紙代、抵当権抹消費用、測量費、解体費…
そもそも自宅の売却では、売値が手元に丸々残るわけではなく、逆に多額の出費が発生する。
売主はまず売却額に応じて計算される「仲介手数料」を不動産業者に支払う。さらに、売買契約時に必要な「印紙代」、売り出す家の住宅ローンが残っている場合の「抵当権抹消費用」など、手続きに係わる出費がある。
「戸建を売る際に土地の境界確定が必要な場合の測量費や、更地にする必要がある場合の解体費がそれぞれかかることがあります。これらは数十万~100万円単位の大きな出費となります」(前出・山下氏)