京浜急行蒲田駅がサントリーとコラボして、田中みな実を起用した「京急蒲タコハイ駅」キャンペーンが大きな波紋を呼んだ。構内で缶チューハイのタコハイと蒲田名物の餃子を楽しめるようにしたが、アルコール依存症の問題に取り組むNPO法人から「公共の場にそぐわない」などと指摘を受け、看板は撤去された。今回の騒動は今後のアルコールメーカーの販促活動に影響をいかに与えるか。大手広告会社出身のネットニュース編集者・中川淳一郎氏が考察した。
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今回の件は、広告業界の会議でも大きな話題になりました。結論としては「酒のPRはより難しくなるな……」というものです。元々タコハイは1980年代に登場し、「カールおじさん」の制作者として知られるひこねのりおさんがタコのキャラを作りました。
ひこねさんはサントリーの缶ビールでもペンギンのキャラを描いていますが、両方のキャラが「酒のキャラとしては可愛すぎる。未成年が安易に手に取ったらどうするのだ」などと批判を受けた経緯があります。その後も同様のケースでは、キリンビールが「氷結」のウェブ限定でアニメCMを制作したものの、撤回した例があります。
令和版タコハイはアニメのタコキャラは採用されていませんが、そこはサントリーが昨今のコンプラ意識の高まりを重視したのでしょう。20~30代の若者とタコハイについて語る時、現在50歳の私は「1980年代にね、タコハイはタコのアニメキャラがCMに出ていたんだよ。今のタコハイってその系譜を継いでいるんだよ」なんて言ってしまいます。すると「えっ? タコ焼きと合うからタコハイなのかな、なんて思ってました!」なんて答えが来ます。
さて今回、京急蒲田駅では看板は撤去したうえで飲食ができる場所の運営は継続。NPOの主張はある程度受け入れたうえで、社会的に問題がないと判断できる範囲でのキャンペーン展開を続けました。
この企画は多額のお金がかかっていると見ます。金額を推測で述べるつもりはないものの、広告会社社員の話を聞くと、「かなりデカいキャンペーンで、もしも自分が携わった場合は『代表作』になる」なんて声もありました。