中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「京急蒲タコハイ駅」騒動を受けて今後の酒類PRのあり方はどう変わっていくか

構内にも多くのタコハイに関連する駅広告が見られた

構内にも多くのタコハイに関連する駅広告が見られた

今まで以上に「公共性」を考慮しなければならない

 そこまで大規模なキャンペーンが縮小されたわけで、こうなると今後酒類のPRはいかにしてやるか……という話になってきます。まず、駅や空港を使ったキャンペーンは難しくなるでしょう。

 基本線としては、公共の場では難しく、入場料を支払ったり、来場者が明確な意図を持ってお酒を飲もうとする場所なら許されるということになるのでは。駅も運賃という名の入場料を払ってはいるものの「公共交通機関」の名が示す通り、公共性が強すぎる。

 今後、こうしたお酒がらみの販促キャンペーンをやる際は、今まで以上に「公共性」を考慮する必要があるといえます。公共性がある場所といっても、たとえば国立博物館で「酒の歴史展」といった文化の側面に絞った展覧会があった場合に、お酒の販売・試飲イベントを展開し、「国立酒博物館」というコーナーを作るのであれば問題はないかもしれない。

 一体どこまでが「公共」なのかの線引きはNPO法人の判断次第となるでしょうが、キャンペーンを実施する企業の側もNPO的発想は持つべきではないでしょうか。そのうえで「ここは私空間である」と判断できる場合はキャンペーンを実施する。

 とはいっても「オクトーバーフェスト」のようなビールのイベントは、東京都が管理している芝公園でも実施しているわけです。「タイフェス」「ラオフェス」等様々な酒が絡むイベントも代々木公園で実施しています。今回のサントリーの件は「駅の名前を一時的とはいえ酒の名前に変える」というところが「やり過ぎ」だと捉えられたのでしょう。

 NPO法人の対応を「やり過ぎ」と見る向きもありますが、彼らはアルコール依存の人々・家族の苦悩を直接見ているからこその提言だと思います。だからこそオクトーバーフェストやタイフェスにはクレームを入れていない。今回の件はお酒やタバコをPRするにあたり、細心の注意をすべき観点を与えてくれたのかな、と呑兵衛の私も思いました。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など多数。最新刊は『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)。

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