かつての日本人も海外ではひんしゅくを浴びてはいたものの…
2000年代後半から2010年代にかけて、北京五輪・上海万博を経て豊かになった中国人観光客の訪日が激増した際、「爆買い」が話題になるとともに、そのマナーが問題視されるようになりました。当時、銀座の街中で中国人の親が子供に排泄をさせる姿も報じられたことから、日本のネット上では中国人観光客を迷惑視する論調もありました。あれから10年以上が経過しましたが、厄介な観光客は依然として一定数いるようです。
とはいえ、これはかつて日本人もやらかしたことが知られています。特にバブル期、日本人はこぞって海外旅行に出かけてはカジュアル過ぎる服装でブランド店に大挙して押しかけたり、高級レストランでのテーブルマナーもなんのその。集団で動いて大騒ぎする日本人観光客が、現地でひんしゅくを浴びていました。
そういう過去を踏まえると、マナーの悪い中国人観光客に対して「オレ達もかつてはそうだったのかな」と私自身思いつつも、「そろそろ訪問先の作法を身につけてくれないかな」とも願うのです。
少し前に私が東京出張へ行った時宿泊したホテルでのこと。朝食バイキングでは中国人観光客がとにかく大量に食べ物を取り、すぐにバットを空っぽにしてしまいました。さらにはそれらを空のコンビニ弁当の空き容器らしき入れ物に入れて部屋に戻る様を目撃しました。
そういった経験を何度かしたことで、私はもう朝食バイキングには行かなくなりました。とにかく、彼ら/彼女らのさもしい姿を見たくないのです。中国は今や世界2位の経済大国だし、アメリカと並ぶ「2強」という状況。海外旅行に出かけるほど経済的に余裕があるなら、行動にも余裕を見せてほしいと思うのですが、おサイフとマナーは関係ないのでしょうか。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など多数。最新刊は『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)。