西武ホールディングス(HD)は、東京都千代田区の赤坂プリンスホテル跡地に建設した複合ビル「東京ガーデンテラス紀尾井町」を2024年度中に売却すると発表した。経営の立て直しを図る西武HDが復活するにはどのような手があるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、「もし私が西武HDの社長だったら、どうするか」を具体的に考え、提言する。
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西武は堤康次郎が創業した箱根や軽井沢の開発を手掛ける不動産会社の箱根土地(後の国土計画/コクド)に始まり、終戦後、経済的に困窮した旧宮家や旧華族から邸宅を買い取るなどして、鉄道からホテル、ゴルフ場やスキー場などのリゾート開発に事業を拡大。日本各地とハワイなどのベストロケーションを押さえて一大グループに成長した。
しかし、今やホテル事業は富裕層向けの高級なラグジュアリー系とアパホテルや東横インなどのリーズナブルなビジネス系に二極分化し、その中間のプリンスホテルは行き詰まっている。新型コロナウイルス禍による鉄道事業やホテル・レジャー事業の業績悪化は一服したものの、グループ全体の業績は低迷が続いているため、不動産の売却を余儀なくされたのである。
では、もし私が西武HDの社長だったら、どんな手を打つか? 競合しているJR東日本と合併する。
そのメリットは3つある。
1つ目は軽井沢の再開発だ。たとえば、西武は軽井沢に8つのゴルフコースと2つの練習場を所有している(西武グループホームページより)。だが、標高約1000mで冬季寒冷地の軽井沢にゴルフコースをたくさん持つ必要はないので半数の4つは潰し、世界的な経営力とネットワークを持っている香港系御三家の「シャングリ・ラ」「マンダリン オリエンタル」「ザ・ペニンシュラ」や「フォーシーズンズ」「シックスセンシズ」「バンヤンツリー」などと組んで、新たな高級リゾートを開発するのだ。既存のプリンスホテルはあまりにも古く“途上国日本”の時代の代物だからである。
また、西武は(辺鄙な所に立地するのが通例の)アウトレットモールを軽井沢駅前で展開しているが、ここを高級リゾート型ホテル用地とするのも一案だ。JR東日本と組めば、北陸新幹線を中軽井沢駅にも停め、西武が保有している広大な千ヶ滝周辺の付加価値を爆上げすることもできる。