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漫画村の元管理者は「支払うつもりはありません」と開き直り宣言 財産がないという理由で賠償金の不払いは通用するのか、弁護士の見解

「漫画村」に無断掲載され、約19億円の損害賠償の対象となった漫画作品の数々(時事通信フォト)

「漫画村」に無断掲載され、約19億円の損害賠償の対象となった漫画作品の数々(時事通信フォト)

 刑事事件とは、刑罰をもって処断するのが必要な反社会的な行為である犯罪を取り締まり、処罰し、また、処罰されることを警告して犯罪を予防し、犯人を矯正する手続きです。単に、お金を支払えないのを社会悪だとはいえません。

 他に処罰しても、支払えない人に取り立てのため、タコ部屋に閉じ込めて強制的に労働させるようなことをすれば、奴隷労働であり、憲法違反となります。強制労働を禁止した『労働基準法』違反により、10年以下の懲役などで処罰されます。つまり、彼に財産がなければ、賠償金の回収は不可能です。

 では、この先、どうなるかですが、裁判所で破産手続をすれば、通常は免責を得られますが、悪意で加えた不法行為による賠償金は、免責されません。彼に、出版社に損害を与える意図があったと認められると免責はなく、生涯負債を背負い続けることになるのです。

 なお、借金を踏み倒すこと自体が刑事罰にならないとしても、例えば、最初から返す意思がないようだと、詐欺になります。なんにせよ、法律ではこのような場合、“なぜ、お金を支払う責任が発生したか”が最大の問題になります。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※週刊ポスト2024年6月28日・7月5日号

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