ネットやSNSがこれだけ一般的になった今、ビジネスの世界において「守秘義務違反」は大きなリスクとなっている。広告代理店と契約をした映画製作会社が「守秘義務違反したら罰金500万円」という罰則を設けた場合、これは有効なのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
広告代理店に入社したての若造です。先日、大作映画の宣伝に携わったのですが、映画製作会社より守秘義務違反を犯した場合「罰金500万円を支払う」という書類にサインを強要されました。いくらなんでも、映画の内容を外部に漏らしたぐらいで500万円は高過ぎますし、法的にも間違っていませんか。
【回答】
映画製作会社が広告発注先の広告代理店の従業員個人から、直接違約金付きの守秘義務念書を取り付けたとのこと。このケースにおいては、映画製作会社と広告代理店の会社同士で守秘義務契約を締結し、これを受けて特に必要な場合に、代理店が従業員に守秘義務を誓約する文書を差し入れさせるのが、正常な有り方のように思います。
その場合であれば、会社は守秘義務違反の罰金を定めることはできません。労働基準法で「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と規定されているからです。
あらかじめ決めておけるのは、就業規則で義務不履行への懲戒として「減給」を定めることだけであり、その場合であっても、減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額以下、月給制なら1か月の総額が月額の10分の1以下までとなります。もっとも違約罰の定め等が無効でも、労働者に故意や過失が認められ、会社に損害をかけた場合には、実損害額に基づく応分の賠償義務を負うことにはなります。